ここは東海道馬入川の渡し--。岸を離れる舟に、渡し賃をまけろと声をかけたのは苫の半太郎。それに答えて金を出そうという男が現われた。大阪の米問屋鳴海屋の番頭弥佐平である。彼の横には年の頃十七、八の美しい盲目の娘お菊がいた。この二人は江戸の名医岑海に眼の治療を頼みにゆく道中だった。だが半太郎の出現に苦い
ここは東海道馬入川の渡し--。岸を離れる舟に、渡し賃をまけろと声をかけたのは苫の半太郎。それに答えて金を出そうという男が現われた。大阪の米問屋鳴海屋の番頭弥佐平である。彼の横には年の頃十七、八の美しい盲目の娘お菊がいた。この二人は江戸の名医岑海に眼の治療を頼みにゆく道中だった。だが半太郎の出現に苦い顔の三人--。お芳、当九郎、万吉ら旅人目当ての道中師である。カモとにらんだ弥佐平、お菊に連れができたからだ。お菊らに別れた半太郎は、ふとしたことで人の好さそうな旅鴉朝吉と知合いになった。だがこの男、道で金をひろうと大喜びしてどこかへ立ち去った。また一人旅がはじまった。と、ドスンとぶつかった女--。お芳である。お芳は弥佐平からスリとった財布をバレそうになったので半太郎のふところへ突っこんだのである。一方、お芳を追った弥佐平とはぐれたお菊はひと儲けを企む旅の博...
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